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思春期の心とからだ

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思春期相談員・カウンセラー  

 佐藤 晴世  

 

多難な思春期3

自殺から子どもを救う

 
自殺大国・三万人の危機

 

 “思春期の性と生”を追う中で「星の王子さま」や「雪の女王」を取り上げました。

 思春期には「星の王子さま」の王子や「雪の女王」のゲルダのようにみごとな成長を遂げる子どもたちがいる一方、カイのように心の病(ガラスの破片)を抱える子どもも少なくありません。

 

 欲しい情報がすぐに手に入る時代になって、子どもも大人も必要以上の情報を手に入れる一方、情報過多に翻弄され「今の自分は普通と違う」と悩んだり、大人は大人で「私たちの子育ては間違っていた」と深く落ち込んだりします。成長期の急激なホルモンの変化に耐えきれず自律神経に不調をきたしたり、思春期をうまくクリアできずに引きこもる子どもが少なからずいます。そして機械文明の発達した現在ではリセット感覚で自死を選ぶことも希ではなくなりました。

 年間の自殺者が 9年連続3万人を超える日本という国は、命の教育がもっとも遅れた国と言わざるを得ません。学校では児童や生徒が自殺した場合、あわてふためいて「命を大切にしましょう」と子どもを集めて話します。こんなことでは到底命の教育とは言えません。

 

 自殺者の多くは10代では思春期に集中し、働き盛り世代では更年期に集中して起こっています。 この共通項をさぐれば自殺者を救う手だては、もっとはっきり打ち出すことができるはずです。

英才教育よりも思春期教育

 今の日本は幼児の早期教育や英才教育がもてはやされますが、それは生きる力を育むことにつながっていません。子どもたちには幼児期から「自分がどのように大人になっていくのか」という疑問に答える思春期教育が必要です。

 

 幼児期は遊びを通して動物としての本能(生き抜くための勘)を育てる時期、児童期は友だちとの取っ組み合いや言葉を通してコミュニケーション能力を育てる時期です。この基礎がなければ思春期の育ちはありません。

 

 こうした幼児期からの基礎的な人間教育と、それに加えてホルモンが体に作用して大人になる準備をする思春期教育までを一貫してコーディネイトする力が大人に求められています。 そのような教育が充実して、初めて子どもたちに人間として生きる力が備わって行くのです。 日本では小学校高学年で二次性徴について学習しますが、それはほんのさわりのような教育で、子どもの疑問や不安に充分答えているとは言えません。

 

 思春期におこるさまざまな変化は「雪の女王」のカイのように時として壊れやすく繊細さをともないます。具体的にホルモンがからだに及ぼす変化や心に与える影響を教えることは、こうした時期の子どもたちに自分のからだを科学的に検証し鬱に陥る危険を回避する手助けになります。

 

 

命を救う「思春期教育」こそ

 

 現代は、小学生でも約一割が鬱傾向だというデータがあります。鬱傾向の子どもたちは眠りが浅く疲れがたまり、些細な言葉でも傷つき自死を選ぶ危険があります。思春期鬱が自殺の原因の第一と断定できなくても、心理的に追い詰められやすいことは容易に想像できるはずです。

 友だちからのちょっとしたからかいの言葉、言われたくない嫌なあだ名、容姿に関する中傷、また教師や親の「もっとがんばりなさい」「怠けている」「そんなことではよい学校には入れない」、こうした言葉の投げかけは、陰湿ないじめなどが無くても、鬱の子どもにとっては命にかかわる言葉なのです。

 

 こうした思春期教育がないがしろにされてきた背景には文部科学省の指導要領がかかげる学力重視があるのではないでしょうか。学力は一生を通じて伸ばし続けることができますが、子どもたちの命を救うには思春期教育こそ、早期に早急に必要だと思うのです。

 親や子どもを自殺でなくした人の悲しみは図り知れません。思春期や更年期に対する認識を改め、学校教育にこうした項目を加えることが、自殺者を減らす対策の一つになるのではないでしょうか。

 

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