|
bP6 |
思春期相談員・カウンセラー 佐藤 晴世 |
多難な思春期 〜自殺〜 |
| 昨年から今年にかけて、小学生や中学生のいじめ自殺が多く報道され、日本中に衝撃が走りました。子どもの自殺の多くが思春期に集中していることはみなさんも気付かれていると思います。
昨年10月に自宅で自殺した福岡県の中学校2年の M君(当時13)に対し、集団でズボンを下ろそうとするなどの「いじめ」があったという報道がありました。 調査委員会の報告書などによると「6時間目終了後、5人がトイレで取り囲み、押さえつけてズボンを下ろそうとしたほか、学生服のボタンを外したりした。抵抗されたため途中でやめた」とあります。 この一件は自殺にまで発展したため多くの人がショックを受けたことと思いますが、このようないじめは今までも頻繁に起こっています。 私が関わった子どもたちからも同類(ズボンを脱がされる・性器をつかまれるなど)の悩み相談や目撃した子どもから「先生、 A君がかわいそう!」という訴えがありました。 研究所の相談事例でも「性器を 蹴られてしまいました。昼前に蹴られたのにまだ痛くて、右の金玉が左より大きくなっています」という内容や、 「金蹴りがはやっています。そのあとに電気按摩という連続技をやられています。そんなとき自分は勃起してしまいます。こんなことが毎日繰り返されています。なんとかとめる方法がないでしょうか?」 また、ある成人男性Nさんは「わたしは、高校を退学するまで、いじめを受けていました。当時のことを振り返ると、わたしは、よく自殺を図らなかったものだと思います。」それがどのようなものだったか。 「黙っておいてやるから、陰毛をみせろ。」そう言われて、空き地で下半身を裸にされたことが2度。 トイレに連れ込まれ、無理矢理マスターベーションをやらされたこともある。と訴えています。そして、いかにわたしを傷つけたり、感覚をまひさせられていったかを書くとキリがない、と訴えています。 Nさんはいじめが原因で、その後長く精神的なダメージから社会生活が困難を極めています。
このような性犯罪、あるいは性犯罪となりかねない事案に対し、保護者、教師を含めて大人達があまりに鈍感な対応しかしていないことがとても気がかりです。思春期の子どもたちは羞恥心・自尊心の芽生えが著しい時期です。ですから、自殺した M君と同じような経験をした子どもたちの多くは、誰にも話しません。自分の傷ついた気持ちを笑いでごまかしています。 このような性的いじめに対して「それはセクハラで、性犯罪です。すぐに身近の大人、保健室の先生か、一番話しやすい先生に相談してください」とアドバイスしますが、実際は問題視してくれる先生は少ないようです。 私自身、このような性的いじめに対して「本人も楽しんでるんです」「あの子にも問題があるんです」という答が教師から返ってきて唖然とした経験があります。 子どもはいじめられているとき、特に思春期の男子は泣きません。泣くのは弱虫のすることだといわれ続けて成長してきたからです。笑って過ごすことで「この場が早く終わりますように」と祈っているのです。いじめられている子どもは無力感に打ちのめされ、自己肯定感が低下していきます。そのような子どもにとって、自分で解決する力が残されているとは思えません。大人はその事を敏感に察知する能力が必要です。 日本の教育界は今、性教育への非難が先行していますが、大人のからだになっていく思春期の子どもたちの性の問題に何の援助も行われていないのが実態です。 いじめられている子どもへの対応に心を砕く一方、いじめる側の子どもにも、心やからだをコントロールできる力をつけさせるような支援カリキュラムが早急に必要です。 教師をはじめ、大人がいじめをゆるさないという信念を持つと同時に、性に対しても重要な認識を持てば、 M君やA君、Nさんのような性的なからかいやいじめに苦しむ子どもは確実に減るのではないでしょうか。 また、この年齢は精神的に自立したい気持ちとそれが出来ないことへの葛藤、自律神経の不調からくる心身の不安など、心が揺らぎやすい年齢です。昨年から続いているいじめ議論は大切ですが、同時に思春期の子どもたちの精神的なケアが充分に出来るシステムが日本の教育現場に用意されていないことの問題がもっと議論されて良いのではないでしょうか。 そしてどんな理由であれ、登校を渋ったときに「学校を休みたくなる時だってあるよね。長い人生、少しぐらい休んだってどうってことないよ」という大らかさが大人の側にあって欲しいものです。 |
ご相談・問い合わせ
|