熟年の性を考える

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研究員  岩淵 成子
 
退職後も「性別役割分業」は健在?
 

  私の家の近くには地域で1、2の規模の公園があります。
 町内会長から頼まれ、その公園で「朝の体操」を始めて1年がたとうとしています。体調を崩し原稿が書けなかったときも、自分の「仕事」として日曜日以外は毎日続けてきました。

 今話題のウォーキングを取り入れ、腸腰筋を鍛える左右。脳にも刺激を与える前後。参加者のコミュニケーション力をつける自己紹介入り。フォークダンス調のウォークなど。ただ身体のためだけでなく、脳を活性化し、心をひらく30分になるよう、無い知恵を絞ってなかなかの体操が作れたと、自画自賛していました。
 町内の回覧板や掲示板でPRしたので、10人や15人は集まるだろうと予想していましたが、1年後の今も毎朝集まるのは5、6人だけという状況が続いています。しかも、全員が「おじさん」(というより「おじいさん」)ばかりで、たまに参加する女性がいても長続きしません。
 

 なぜメンバーが増えないのか不思議に思っていましたら、不参加者の声がもれ伝わってきて理由が掴めました。
 

 理由の一つは、朝、7時過ぎからの30分では女性は出られないというのです。夫が体操に行っている間に妻は朝食の準備をしておかねばならないから、夫婦での参加は難しいのだそうです。出勤時間に間に合わせるために朝食を準備するという必要は全くなくなっている定年後ならば、30分やそこいら食事が遅くなろうとも、夫婦2人で体操に来て、帰ってから2人で食事の準備をすればいいと思うのですが、それは難しいようです。

 今の60代、70代の方々は定年後も「役割分業」がしっかり生きていることが分かりました。数十年かかって作り上げた「役割分業」は、定年になったからといって簡単には変わらないようです。
 

 しかし、毎朝見ていると、たくさん来る犬の散歩の方は半数以上が女性です。ということは、「体操が大事」と思えばやりくりして出てこられるのかもしれません。もしかしたら、妻の側にも「わざわざ体操などしなくても今のままで大丈夫」という、身体への根拠のない思いこみがあるのかもしれません。とはいえ、私には自分の身体を気遣わないことも含めて「役割分業」が根を張っていると思えてなりません。
 

 二つ目は、60代、70代の女性が持つ貧しいセクシュアリティです。
 「じいさんばかりだから行きたくない」、「男の人と手なんかつなぐ体操はしたくない」。これらの声に代表されるように、複数の異性の中に自分が入ることや、異性と手をつないだりすることは、「慎ましやかな女」として生きてきた自分が変わったと、周囲から見られるかもしれないと怖がっているのかもしれません。
いい年をして、男も一緒になった場でニコニコ体操することなど、とんでもないという考えに固まっているのかもしれません。
 または、若いときから今日まで夫とのスキンシップを含めて、本当に楽しく心地よい「ふれ合い」を持てなかったことに原因があるのかもしれません。

 夫とのセックスを含むふれ合いは「義務」で、それ以外の異性とはふれ合うことを禁じられてきた人生が、異性とのふれ合いを全面的に拒否してしまう女にさせたとも考えられます。
 

 夫婦で一歩を踏み出せば、「冬の時代」を生きていく今を、こころ温かく明るくあゆんでいかれるはずですのに。私はもったいないと思いますが、読者の皆さんはどうお考えになりますか。
 

 

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