熟年の性を考える

bW
 
研究員  岩淵 成子
 

二人の「愛の表現」にインサートは不可欠でしょうか
 
 バイアグラ考 

 

  60代の女性から研究所へ以下のような相談が入りました。読者の皆さんはどうお考えになりますか。
 

 最近恋人ができました。二人でホテルに行くこともあります。しかし、彼は勃起できないのです。2時間、3時間ともに過ごしてもできません。先日は2泊もしてしまいましたが、やっぱりできませんでした。彼はバイアグラを試してみようと言うのです。副作用が心配ですが、彼が満足するためには試した方が良いでしょうか。
 これだけの質問で答えを出すのは困難です。なぜなら、彼女がどうしたいのかが全く見えないからです。
 

 彼は、勃起して挿入させることが愛する人に対する「男」としての当然の行為だと思い込んでいるでしょう。そして、それができることが自分の「男」を「若さ」を確認することだからこだわっているのだと見えて来ます。
 しかし、彼女はどうなのでしょう。NO1で書きましたが、奈良林先生によれば30代の女性も70代の女性もオーガズムの感じ方は同じだそうですから、60代の彼女がオーガズムを求めてもそれは当然で何の不思議もありません。しかし、オーガズムは挿入によってもたらされるものではないことも奈良林先生は言っておられます。彼女が挿入によってオーガズムを得たいと思っているならば、それは誤解です。
 60代の恋人同士が生殖の性を卒業していることは事実です。それでも性関係を求めるのは、互いの愛を確認し、信頼を深め、癒しを求めての行為でしょう。その場合に、挿入を絶対視する必要があるのでしょうか。どうも私たち自身が、挿入や射精にこだわる今の日本のポルノ文化に知らず知らず汚染されているような気がしてなりません。良しとしているわけではないのに、考え方の基盤に取り込まれていると感じます。
 

 研究所で「冬のソナタ」についての本を出す企画があり、春川など現地を訪れるツアーに参加するため、遅ればせながら大急ぎでビデオを見ました。
 おば様達が夢中になっている「ヨン様」をはじめ、ドラマのヒーロー達に共通していることは、キスも性交もほとんど画面に出てこないことでした。唯一出てくるのがハグ(抱き合うこと)です。これは日本のドラマを見慣れた私にとっては実に新鮮な驚きでした。
 

 3年前、ソウルで最大の本屋さんに案内していただいたとき、ポルノ雑誌類は店頭には一冊もありませんでした。ガイドさんに聞いた話では、日本から輸入されて「援交」が流行って困っているとのことでしたから、監督が意図的に作ったことで、韓国の現状をリアルに表しているのではないかもしれません。しかし、ユジンの婚約者がホテルに連れ込んだことを告白すると、友達から非難される場面がありましたから、韓国内では婚約者といえどもホテルなどにつれ込むことは恥ずべき行為とされているのでしょう。
 ハグだけの画面であるからこそ、互いの想いがより深く伝わってきました。キスしたい、性交したいという気持ちがあるはずなのに、相手への思いやりでそれを抑えているのが、画面から伝わり「愛」をより強く感じました。おば様達が夢中になる一因はこれかなと思ったくらいです。
 

 バイアグラは心疾患、腎疾患の方は使えません。高齢になれば当然、心臓や血管には故障が出てきます。それへの副作用を心配しながら挿入にこだわる必要があるのでしょうか。互いの了解があれば何はダメということはありませんから、二人の選択で横から口を挟む問題ではないとは思いますが、挿入できたから「若さ」が戻ったと「錯覚」したり、「挿入」されたことで女性として一人前だと「錯覚」したりするのは寂しい気がします。そんなまがい物のような恋ではなく、夕日の輝きのような恋をしてほしいと言いたくなります。
 夕日には、昼間の太陽のようなあらゆる生命を育て実らす強さはありません。しかし、明日もまた良き日であることを約束する希望があります。1日の疲れを癒すために眠りにつくことを良しとするやさしさがあります。これは昼間の太陽にはない光です。
 性が若い人たちの専売特許ではなく、年齢にふさわしいすばらしさがあることに自信を持って臨んでほしいと言いたいのです。若い者のまねをするのではなく、若いときのままをなぞるのではなく、今でなくてはできない新しい形を創造してほしいと私は考えますが、読者の皆さんはいかがお考えでしょう。

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