熟年の性を考える

bU
 
研究員  岩淵 成子
 

リタイア後の準備は現役時代から

 

 リタイア後には新しく趣味を始めよう。時間はたっぷりあるのだから大丈夫。別の面で一旗揚げられるかもしれない。と考えておられる方も多いのではないでしょうか。
 私もそう考えていました。「定年になったらやりたいことは決まっている。今始めると仕事に触るからやらないだけ」と自分に言い聞かせてきました。


 「下手で良い。下手が良い。」というキャッチコピーにも魅力を感じ、前々からやりたかった「絵手紙」を始めました。ところが、初めて描いた「エリンギ」は、サークルで指導者の立場にいる仲間から「鉄アレイみたいで・・・」と言われる始末。子どもの時はけっこう好きで、小学校では賞状ももらった記憶のある絵も、40年以上のブランクによるのか、「20すぎればただの人」の部類だったのか、まったく思ったようには描けない。サークルの先輩達は「毎日描いていれば、だんだん描けるようになるから。私なんか1日に3枚ずつ描いたのよ」と慰めてくれました。確かに毎日3枚描こうと思えば時間はたっぷりあります。しかし「いいおとなが幼稚園児みたいな絵を毎日3枚なんて描いていられるか」というプライドが邪魔をしてあえなく挫折。「生涯現役」と言えば聞こえは良いが、肩書きなしのヒラで終わった私でさえ、仕事をしてきたとのプライドがあるのだから、それなりの社会的地位で終わった男達の場合は、よけい「やってられない」の気持ちが強いだろうと推測できます。


 落ち込んだ私を救ってくれたのは、これも小さいときから好きだった「文章を書くこと」でした。こちらは仕事での必要にも迫られ、ずっとやってきたから何とか書けるので、放り出さずにすんでいます。
 つまり、本当に「下手の横好き」で全然上達には関係なくはまってしまうか、余程のノーテンキで「俺の楽しみだからこれでいいんだ」と思えるか、上達していく才能があれば別ですが、そのどれもない場合は「おもしろくない。やめた。やめた」と投げ出すことになるのが「関の山」で、これが凡人の常ではないでしょうか。
 テレビで「定年後に始めて今はこれだけになった」という紹介番組を時々見ます。シルバー陸上に出たとか、名取りになったとか、画家として大成したとか。しかし、あれはテレビに出るくらいまれだということで、みんながそうなるのなら、テレビで取り上げることはないと思います。


 カルチャーなどが人集めをしたり、シルバー産業が儲けたりするための「一種の誇大広告だ」と言いたくなります。今話題の「リフォーム詐欺」ならぬ「カルチャー詐欺」だというのは言い過ぎでしょうか
 子どもの時に好きだったからやりたい、定年後にはあれを始めてみたいと考えていることがあったら、たとえ年に数回でも良いから、現役時代にやっておくことをお勧めします。
リタイア後にまったく新しいことを始めるよりは、やり慣れていたことを続ける方が負担が少なく続けやすいと実感しているからです。


 特にこれといって思いつかないという方には、パートナーのやっていることを一緒にやってみることをお勧めします。「地域の達人」が続けていることなら、年金生活後も続けられること間違いないし、夫婦の会話がはずみ、楽しい老後になること請け合いです。
 性教協代表幹事の村瀬先生は「妻が熱心にやっているから、どんなものか自分もやってみよう」という理由で民舞を始められたと聞いたことがあります。まだ、50代にはなっていなかった頃のことらしいですが、今では夫婦でハマっておられるようです。「婦唱夫随」の典型例であり成功例だと思いますが、読者の皆さんはどうお考えでしょう。

 


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