熟年の性を考える

bQ9
 
研究員  岩淵 成子
 
弱い女に当たり散らす男のさびしさ
 

 

 用事があって、区役所に出かけました。
 簡単な用事ですぐに終わり、帰りかけたとき、「おまえ達が来いと言ったから、来たじゃないか」と、大きな声がしました。
 何事かと思い声の方を見ると、年金か何かの還付を担当する窓口で、女性の担当者と、60代後半と思われる男性が、向き合っていました。
 女性の声は聞こえませんが、男性の声はよく聞こえました。通り過ぎる足をゆるめると、だいたいの事情は飲み込めました。

 還付金を取りに来てくれという通知を受け取り、わざわざ役所に来てみると、すでに受け取り済みのため、還付金はもらえないと分かったことに、端を発しているようでした。
 男性の言い分は、役所からの通知だから、わざわざ交通費も使ってきたのに、受け取り済みです。お帰りくださいとは何だ。そっちが間違えたのだから、謝るべきなのに、その態度は何事だ。おまえのような女ではなく、上司を呼んでこい。ということのようです。
 担当の女性は、若い入り立てではなく、かなりベテランの様子で、はがきには注意書きも書いてあったはず。来ていただいたのは申し訳ないが、二度払うことはできないので、お引き取り願いたいと、丁重に説明していました。

 パリッとしていない服装からも、豊かでない年金生活の方だろうと想像されました。いくらかの還付金でも、生活の足しになるから、もらいたいという気持ちが強く、すでにもらっているかもしれないと、うすうす感じながらも、問い合わせをしなかったようです。
 期待はずれの結果となり、憤懣やるかたないことも分かります。大きな声を出したからといって、もらえるようにならないことは分かっていても、出さざるを得ない気持ちだったのだと同情はします。

 それにしてもと考えました。窓口の担当が、女性ではなく、男性だったらどうなっていただろうかと。女性担当者だったから、余計大声を出したということはないのだろうかと。 相手が女だから、居丈高になる男に見えてしまったからです。

 そして、家庭内の様子も透けて見えてしまいました。妻には威張るだけの男で、妻は「面従腹背」になっていて、実状は家庭内離婚状態になっているではないのか。と。
 威張る相手は妻しか居ない、「いくら落ちぶれても、オレは男だ。女よりはましだ」が、最後の砦となっているような男の、寂しい姿でした。

 不当な扱いに異議申し立てすることは、人権の立場から奨励すべきですが、人を怒ることしかできない男は、家庭内でも孤立し、世間からも孤立していく「気の毒な男」になってしまうのではないでしょうか。
 せめて、妻には優しい夫になることで、これからの長いシニアライフが、暖かいものになるのではないかと思いますが、読者の皆様は、どうお考えでしょう。

 

  
 

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