熟年の性を考える

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研究員  岩淵 成子
 
妻をとりますか 母をとりますか
 

 この間、2年ぶりで知人と会いました。姑の介護で、外出が難しくなっていたが、姑が亡くなったので、また出てこられるようになった、と言いました。
 うつむいて書き物をしているときは、気づかなかったのですが、立ちあがった姿を見て、我が目を疑いました。以前は、背筋がピンと伸びて、スラッとしたカッコイイ女性でした。それが、ドラマに出てくる老婆のように、背中が丸くなっていたのです。 5、6年も、ずっと介護を続けてきた結果だ、とのことです。

 彼女は、身体の変化が現れたので、はっきり分かりますが、彼女と同じような例は、あちこちで聞きます。
 身体に変化は出なくても、子育てが一段落して、自分のやりたいことを始めた矢先、介護が始まり、年老いてから、趣味も生き甲斐もない、寂しい老後になった女性も居ます。

 そんなになる前に、老人ホームに入れることは、考えなかったのかと聞きましたら、夫が、どうしても自分で、母親を見たいからといって、ホームに入れさせなかった、と言うのです。世間体が悪いと、ショートステイなども、あまり使わせなかったそうです。
 「自分でみたいからって言ったって、ほとんど世話はしないんでしょ」と聞くと、時々食事を食べさせたり、外出させたりはしたが、下の世話や、入浴は、長男の嫁だからと、私にやらせていた。その結果、まがった背中になってしまった。骨がまがってしまったので、もう元のようにはならない、との答えでした。

 兄弟がいる場合は、特に「長男の嫁」が、今でも生きているようです。我々世代の、男達の頭の中には、まだまだ、旧民法がインプットされたままのようです。
 食事や、外出を担当しているのだから、俺は随分やっている、というのかもしれませんが、体力も使い、気も遣う中心部分の介護は、妻に押しつけていることに、気づいていないようです。自分の妻は、自分の願いを100%適える存在だ、と思っているようです。

 「俺のお袋は、姑の世話を何年もやっていたんだから、おまえにできないわけがない」と、開き直る夫もいるようです。時代と育ちの違う我々世代に、母親世代と同じことを、押しつけられたら、つぶれてしまいます。自分が養っているんだから、俺の言うことを聞いて当たり前と、思われたのでは、対等・平等の夫婦関係ではなくなります。

 息子として、母親を看取りたい気持ちは、分かりますが、これからの老後を、共に過ごす妻に、過剰な負担をかけて、健康な生活をおくることにも、支障を来すようなことをすれば、二人の関係性を、悪い方向に向かわせることにも、なりかねないと思います。
 「お母さんは大事にしても、私への思いやりはなかった」という思いが、妻の胸深くに沈んでいたら、これからの二人の人生に、暗い影を投げかけるのではないでしょうか。
 

 母親は、さっさと老人ホームに入れて、二人で楽しくおやりなさい。などと言うつもりはありませんが、息子としての自分が、いい顔をすることばかり考えているとしたら、少し、考え直した方が良いのではないかと思います。 

 

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