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今月のコラム
“人間と性”教育研究所所長
高柳 美知子

(2003/ 11 /15更新)
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性は最も人間に密着した人権   

子どもに「性の学習権」の保障を!

「私、小学校時代も中学校時代も性教育なんて受けた覚えがありませんねえ。しかし、こういうのは自然に覚えていくもので、ここまでやっていいものなのかな」(小泉首相の国会答弁)

 “ここまで”についてはちょっと置くことにして、小泉首相ならずとも、日本国の殆どの大人は性教育を受けてはいません。今の小学生の親たちは、修学旅行の前に女の子だけ黒いカーテンを張り巡らした特別教室に集められ、養護の先生からスライドで月経の説明。教師の表情は固く、子どもたちも不安と緊張でコチコチです。一方の男の子はほったらかしのまま。野球の球を追いながら、女の子たちの教室が気になって気もそぞろ…。

 小5の保健に「月経・射精」、理科に「ヒトの誕生」が登場したのは1992年、指導要領の改定によるものでした。しかし教科書の記述は、「尿の出るところの近くから」「精子は女性の体の中で卵子とであって」などと、性器や性交には触れないなど、余りに非科学的なものでした。それでも長い間、性を学ぶことから排除され続け、ポルノ情報に頼るしかなかったわが国の子どもたちにとっては、男女が同じ教室で担任の先生から性を学ぶ得難い土俵です。それに教科書の不十分さは教師が補強すればいいのですから。

 そして10年ーようやく、性教育が根をおろし始めたところです。ところが昨年来、右派議員とマスコミや宗教団体による性教育バッシングが吹き荒れ、今年に入っては“異常”としかいいようのない有り様です。冒頭の首相答弁も、バッシングの急先鋒の一人である山谷えり子議員の質問に答えたもの。そういえば、全国の中学生の手に渡るはずだった『ラブ&ボディBOOK』が、回収、廃棄、焼却処分となったのも、山谷議員(当時、民主党)の国会での発言がきっかけでした。

 東京都教育委員会は、こうした動きにまさに相呼応して、性器・性交を授業で教えることは「指導要領違反」とし、授業をおこなった教師を「不適格教員」と認定して処分。それを許した管理責任を問われて、校長にも降格をふくめた処分が言い渡されたのです。さらには、授業で使う教材(副読本、人形、絵本、ビデオなど)をも「不適格教材」として廃棄、焼却処分を命じました。棚上げした小泉首相の“ここまで”とは、つまり、このことをさしているのです。

 これらの攻撃は、単に性教育だけに向けられたものでないのは明白です。かって綴り方教師たちに突き付けられた銃口と同じく、その先には憲法、教育基本法を改悪し、子どもたちを“いつか来た道”へ誘い込む策動にほかなりません。 性−それは人間に最も密着した人権です。いまこそ必要なのは、

@性や性器を個人のプライバシーなものとして尊重する人権教育 

A性的自己決定能力をつけて、自己の性行動に責任をもつ主体性を育てる自立教育 

B自立した人間同士が共に生かしあう共生教育 

Cそのためには、自分のからだと異性のからだを科学的に正しく理解して、お互いに自らのからだの主人公になるための科学教育です。

吹き荒れる性教育攻撃の狙いを見抜き、時代と子どものニーズに応える性教育の推進こそ、今や焦眉の急の課題です。

 

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